クラウド会計の乗り換えを考える人が増えている理由
クラウド会計ソフトは、一度導入すると長く使い続ける前提のツールです。しかし実際には、使い続けるうちに「思ったより使いにくい」「事業規模に合わなくなった」「サポートに不満がある」といった理由から、別のクラウド会計ソフトへの乗り換えを検討する人が増えています。
以前は会計ソフトの乗り換えは大きな手間がかかるイメージがありましたが、近年は各クラウド会計ソフトがデータ出力や取り込み機能を整備しており、正しい手順を踏めば初心者でも対応できるケースが増えています。
ただし、手順や注意点を理解せずに進めてしまうと、数字が合わなくなったり、過去データが使えなくなったりといったトラブルにつながります。クラウド会計の乗り換えは「思いつき」で行うものではなく、事前準備と正しい理解が欠かせません。
クラウド会計の乗り換えで不安を感じるポイント
クラウド会計の乗り換えを検討すると、多くの人が次のような不安を感じます。
・これまで入力したデータは引き継げるのか
・過去の仕訳や残高が消えてしまわないか
・確定申告や決算に影響が出ないか
・どこから手を付ければいいか分からない
特に初心者の場合、「データ移行」という言葉だけで難しそうに感じてしまい、乗り換えを諦めてしまうケースも少なくありません。
しかし実際には、すべてのデータを完全に移行する必要はなく、ポイントを押さえて対応すれば問題なく乗り換えが可能です。大切なのは、どのデータを移すべきか、どのデータは割り切って扱うかを理解することです。
クラウド会計の乗り換えは手順を守れば怖くない
クラウド会計の乗り換えは、正しい手順で進めれば決して難しい作業ではありません。重要なのは、次の3点を押さえることです。
・乗り換えのタイミングを間違えない
・必要なデータと不要なデータを整理する
・新旧ソフトで数字を必ず照合する
これらを意識することで、データのズレや申告ミスといったトラブルを防ぐことができます。逆に、この基本を押さえずに進めると、後から修正に多くの時間がかかってしまいます。
クラウド会計を乗り換える前に整理しておくべきこと
クラウド会計の乗り換えを始める前に、まず現状を整理することが大切です。準備をせずに移行作業を始めると、途中で混乱してしまいます。
事前に確認しておきたい主なポイントは以下のとおりです。
・現在使っているクラウド会計ソフトの種類
・個人事業か法人か
・青色申告か白色申告か
・どこまでの期間のデータが必要か
特に重要なのが「どこまでのデータを移すか」という点です。すべての年度の仕訳を移行しようとすると、作業量が増えるだけでなく、エラーの原因にもなります。
乗り換えに適したタイミングを見極める
クラウド会計の乗り換えには、向いているタイミングがあります。おすすめされることが多いのは、次のような時期です。
・年度の切り替わり時
・確定申告が終わった直後
・新しく事業を始めるタイミング
年度の途中で乗り換えることも可能ですが、その場合は期首残高や途中までの仕訳管理に注意が必要になります。初心者の場合は、できるだけ区切りの良いタイミングでの乗り換えがおすすめです。
データ移行で引き継ぐべき主な情報
クラウド会計の乗り換えでは、すべての情報を完全に移行する必要はありません。最低限、次の情報を正しく引き継ぐことが重要です。
・期首残高
・取引先(得意先・仕入先)
・勘定科目
・未決済の売掛金や買掛金
これらは、今後の帳簿作成や申告に直接影響するため、必ず正確に移行する必要があります。一方で、過去の細かい仕訳については、必ずしも新ソフトに取り込まなくても問題ないケースもあります。
旧クラウド会計ソフトからデータを出力する方法
多くのクラウド会計ソフトでは、仕訳データや残高データをCSV形式で出力することができます。CSVとは、表計算ソフトで扱えるデータ形式のことです。
出力時に確認しておきたいポイントは次のとおりです。
・出力する期間が正しいか
・勘定科目名が分かりやすいか
・文字化けが起きていないか
この段階でデータに不備があると、次の取り込み作業でエラーが発生しやすくなります。
新しいクラウド会計ソフトを事前に設定する
データを取り込む前に、新しいクラウド会計ソフト側の初期設定を済ませておくことが重要です。
主に次の設定を行います。
・事業形態の設定
・会計期間の設定
・消費税の設定
・勘定科目の確認
これらを先に整えておかないと、データ取り込み後に修正が必要になり、手間が増えてしまいます。
期首残高の移行は最重要ポイント
クラウド会計の乗り換えにおいて、最も重要なのが期首残高の移行です。ここがずれてしまうと、その後の帳簿全体が狂ってしまいます。
期首残高とは、乗り換え時点での現金・預金・売掛金・買掛金などの残りの金額のことです。旧ソフトで作成した試算表や残高一覧と、新ソフトの数値が一致しているかを必ず確認してください。
仕訳データを移行する場合に注意すべきポイント
クラウド会計の乗り換えでは、期首残高だけを移行して、過去の細かい仕訳は旧ソフトに残すという方法が一般的です。ただし、「過去のデータも新しいソフトで確認したい」という場合には、仕訳データの移行を検討することになります。
仕訳データを移行する場合、特に注意したいのが次の点です。
・勘定科目名が新ソフトと一致しているか
・補助科目や取引先が正しく反映されるか
・消費税区分がずれていないか
勘定科目の名称や消費税の扱いは、ソフトごとに考え方が異なることがあります。そのため、CSVをそのまま取り込むと、意図しない仕訳になるケースもあります。取り込み後は必ず仕訳内容を確認し、問題があれば修正してください。
未決済取引の扱いを間違えない
クラウド会計の乗り換え時に見落としがちなのが、未決済の取引です。未決済とは、請求書を出したがまだ入金されていない売上や、請求書を受け取ったがまだ支払っていない経費のことを指します。
未決済取引を正しく引き継がないと、次のような問題が起こります。
・入金や支払い時に二重計上される
・売掛金や買掛金の残高が合わなくなる
対策としては、旧ソフトで未決済取引の一覧を確認し、新ソフトでも同じ状態を再現することが重要です。請求書機能を使っている場合は、請求書データの移行方法も事前に確認しておきましょう。
消費税設定と申告への影響を確認する
クラウド会計の乗り換えでは、消費税の設定にも注意が必要です。特に課税事業者の場合、設定を間違えると申告内容に影響が出る可能性があります。
確認しておきたいポイントは次のとおりです。
・課税事業者か免税事業者か
・簡易課税か本則課税か
・経過措置や税率の設定が正しいか
消費税の設定は、後から修正すると影響範囲が大きくなりがちです。乗り換え直後に一度、設定内容を丁寧に見直すことをおすすめします。
データ移行後に必ず行うべきチェック作業
データの取り込みが完了したら、そのまま使い始めるのではなく、必ずチェック作業を行ってください。ここを省略すると、後になって大きなズレに気づくことがあります。
最低限、次の点は確認しましょう。
・旧ソフトと新ソフトの期首残高が一致しているか
・現金や預金の残高が合っているか
・売掛金や買掛金の金額が正しいか
可能であれば、旧ソフトの試算表と新ソフトの試算表を並べて比較すると安心です。
クラウド会計の乗り換えで起こりやすい失敗例
実際に多い失敗例を知っておくことで、同じミスを防ぐことができます。
よくある失敗としては、次のようなものがあります。
・期首残高を入力し忘れてしまった
・消費税設定を誤ったまま仕訳を進めてしまった
・未決済取引を二重に計上してしまった
・データ確認をせずに使い始めてしまった
これらの失敗は、作業そのものが難しいというよりも、「確認不足」によって起こるケースがほとんどです。
初心者向けクラウド会計乗り換えチェックリスト
ここまでの内容を、初心者向けにチェックリスト形式で整理します。
事前準備
・乗り換えのタイミングを決めた
・移行する期間を決めた
・必要なデータを整理した
旧ソフト側
・期首残高を確認した
・未決済取引を確認した
・必要なデータをCSVで出力した
新ソフト側
・初期設定を完了した
・消費税設定を確認した
・データを取り込んだ
確認作業
・残高が一致している
・未決済取引が正しく反映されている
・不明点がないか確認した
このチェックリストを使えば、初めての乗り換えでも安心して進めることができます。
クラウド会計をスムーズに乗り換えるための行動指針
クラウド会計の乗り換えは、「難しそう」というイメージだけで避ける必要はありません。正しい手順を踏み、確認作業を丁寧に行えば、初心者でも十分に対応可能です。
重要なのは、次の3点です。
・焦らず段階的に進める
・数字の確認を必ず行う
・不安があれば早めに相談する
乗り換えをきっかけに、経理の流れが分かりやすくなり、日々の作業が楽になるケースも多くあります。今のクラウド会計に不満がある場合は、一度乗り換えを検討してみる価値は十分にあります。

