経費精算を楽にする会計ソフト|スマホ申請・承認フロー・証憑添付の比較

スマホアプリで領収書を撮影し、スムーズに経費精算と承認承認が行われているイラスト。記事タイトル「経費精算を楽にする会計ソフト」の文字が入っています。
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月末の「領収書貼り」残業から解放されるには

毎月訪れる月末や月初め。多くの会社のオフィスで繰り返される、ある種の儀式のような光景があります。それは、従業員たちがため込んだ領収書の山と格闘し、一枚一枚を台紙に糊付けし、Excelで作られた経費精算書に金額を手入力していく姿です。

「この日の領収書が見当たらない」 「金額を打ち間違えて、合計が合わない」 「課長の承認印をもらいたいのに、出張で不在だ」

このようなアナログな経費精算業務は、申請する従業員にとっても、承認する上長にとっても、そして最終的に処理をする経理担当者にとっても、生産性を奪う大きなストレス源となっています。本業に集中すべき時間を、単なる「集計作業」や「ハンコ待ち」に費やしてしまってはいないでしょうか。

もし、あなたがこれからクラウド会計ソフトを導入しようとしている、あるいは今のソフトを見直そうとしているなら、単に「決算書を作る機能」だけでなく、「経費精算を楽にする機能」に注目すべきです。最新のクラウド会計ソフトは、スマホ一つで申請から承認、そして仕訳登録までを完結させる機能を備えています。これらを活用することで、あの面倒な領収書貼りの作業そのものをなくすことができるのです。

「会計ソフト」と「経費精算システム」の境界線

初心者がよく混乱するのが、「会計ソフト」と「経費精算システム」の違いです。

従来、会計ソフトはあくまで「経理担当者が仕訳を入力するためのツール」でした。従業員はExcelなどで作った精算書を提出し、経理担当者がそれを見ながら会計ソフトに打ち込み直す、という二度手間が当たり前でした。

一方、経費精算システムは「従業員が経費を申請するためのツール」です。しかし、これだけを導入しても、会計ソフトと連携していなければ、結局最後にデータを移し替える手間が発生します。

現在(2025年時点)のクラウド会計ソフトのトレンドは、この両者が融合、あるいはシームレスに連携することです。つまり、従業員がスマホで申請した内容が、承認されると同時に、自動的に会計ソフト上の「未払金」や「旅費交通費」といった仕訳データに変換されるのです。

これからソフトを選ぶ際は、この「従業員からのデータ入力」をどれだけスムーズに受け入れられるかどうかが、業務効率化の鍵を握ります。

アナログ管理が引き起こす「見えない損失」

紙とExcelを中心とした経費精算には、目に見えるコスト(紙代や印刷代)以上に、経営を圧迫する「見えない損失」が隠れています。

一つ目は「時間の損失」です。ある調査によると、経費精算のために従業員一人が費やす時間は月間で数時間に及ぶとも言われています。時給換算すれば、会社全体で毎月数十万円分の人件費が、利益を生まない作業に消えていることになります。

二つ目は「ミスの修正コスト」です。手入力には必ずヒューマンエラーが付きまといます。金額の桁間違い、税区分の選択ミス、インボイス登録番号の確認漏れ。これらを経理担当者が目視でチェックし、不備があれば従業員に差し戻して再提出させる。このやり取りの往復が、決算の遅れを招きます。

三つ目は「紛失とコンプライアンスのリスク」です。紙の領収書は、紛失すれば証拠がなくなります。また、電子帳簿保存法により、電子取引データの保存が義務化されている中で、紙と電子データが混在する管理は非常に煩雑になり、法対応の漏れにつながるリスクがあります。

これらの問題を一挙に解決するのが、クラウド会計ソフトの「スマホ申請」と「証憑(しょうひょう)添付」機能です。

スマホ申請がもたらす「スキマ時間」の革命

クラウド会計ソフトの経費精算機能において、最も威力を発揮するのがスマートフォンアプリの活用です。

従来のやり方では、外回りの営業担当者は、経費精算をするためだけに帰社し、パソコンを開く必要がありました。しかし、スマホ対応の会計ソフトを使えば、移動中の電車の中や、カフェでの待ち時間といった「スキマ時間」に申請を完了させることができます。

例えば、取引先との打ち合わせでカフェを利用したとします。会計を済ませてレシートを受け取ったら、その場でスマホアプリを起動し、カメラでレシートを撮影します。 すると、最新のOCR(光学文字認識)技術が、日付、金額、店名を自動で読み取り、データ化してくれます。従業員が行うのは、内容に間違いがないかを確認し、「申請ボタン」を押すだけです。

交通費精算においても、スマホに内蔵されたICカードリーダー機能や、モバイルSuica・PASMOとの連携機能が役立ちます。スマホをかざすだけで、過去の乗車履歴がずらりと表示され、「訪問A社」「訪問B社」と選んでいくだけで申請データが作成されます。

「経費精算のためだけに出社する」「月末にまとめてやるから記憶が曖昧になる」といった事態がなくなり、経費発生の都度、リアルタイムに処理が進んでいく。これがクラウド化による最大のメリットです。

電子帳簿保存法とインボイス対応を自動化する「証憑添付」

2024年以降、完全に定着した電子帳簿保存法やインボイス制度への対応も、クラウド会計ソフトなら自動化できます。

これまでのように、領収書を紙の台紙に糊付けしてファイリングする必要はありません。スマホで撮影した画像データ(証憑)を、申請データにデジタル添付するだけで、法的な保存要件を満たすことができるからです(スキャナ保存制度)。

また、インボイス制度においては、受け取った領収書が「適格請求書」であるかどうかの確認が必要です。登録番号が記載されているか、8%と10%の税率が正しく区分されているか。これを目視で確認するのは大変ですが、高機能な会計ソフトであれば、OCRで読み取った登録番号を国税庁のデータベースと自動照合し、「この領収書は適格請求書です」と判定してくれる機能まで備わっています。

証憑がデータとして仕訳に紐付いているため、後から「この交際費の領収書を見たい」となった時も、分厚いファイルを探す必要はありません。会計ソフトの画面上でクリックするだけで、当時の領収書画像が表示されます。税務調査の際も、調査官に対してスムーズに資料を提示できるため、心証も良くなります。

上長のハンコ待ちをゼロにする「承認フロー」のデジタル化

経費精算のボトルネックになりがちなのが、上長による「承認」のプロセスです。紙の申請書の場合、課長の机の上に書類が山積みになり、課長が出張から帰ってくるまで処理が止まってしまうことがよくあります。

クラウド会計ソフトの承認フロー機能(ワークフロー)を使えば、この承認作業も場所を選ばずに行えるようになります。

従業員から申請があると、承認者のスマホやパソコンにメールやチャット(SlackやChatworkなど)で通知が届きます。承認者はその通知を開き、添付された領収書画像と内容を確認して、「承認」ボタンをクリックするだけです。もし内容に不備があれば、その場でコメントを付けて「差し戻し」をすることも可能です。

承認が完了すると、そのデータは自動的に経理担当者へと回送され、最終的な仕訳として登録されます。 「誰のところで止まっているか」が一目瞭然になるため、月末ギリギリになって「まだ承認されていません!」と慌てることもなくなります。

また、承認ルートの柔軟な設定も可能です。「5万円未満なら課長承認のみ」「10万円以上なら部長承認も必要」といった条件分岐を設定できるソフトもあり、内部統制(ガバナンス)の強化にもつながります。

主要3大クラウド会計ソフトの「経費精算」機能比較

日本国内で多くのシェアを持つ「マネーフォワード クラウド会計」「freee会計」「弥生会計 オンライン」。これらのソフトはどれも経費精算機能を持っていますが、その実装方法や「どこまで自動化できるか」には明確な違いがあります。(※各ソフトの仕様は2025年時点の情報を基にした一般的な特徴です。最新の仕様は必ず公式サイトをご確認ください)

マネーフォワード クラウド:最強の拡張性を持つ「経費」モジュール

マネーフォワードには、「マネーフォワード クラウド経費」という独立した強力なモジュール(機能)があります。会計ソフトとは別のアプリとして動作しますが、データはシームレスに連携します。

最大の特徴は、連携できる外部サービスの多さです。SuicaやPASMOなどの交通系ICカードはもちろん、ANAやJALの航空券予約データ、さらにはコーポレートカード(法人カード)の明細も自動で取り込みます。 オペレーター入力機能(有料オプション)を使えば、手書きの領収書であっても、ほぼ100%の精度でデータ化してくれます。従業員数が多い会社や、出張が多い会社にとって、最も業務効率化の効果を実感しやすい設計になっています。

freee会計:会計一体型でシームレスな体験

freeeは、会計ソフトの中に経費精算機能が標準で組み込まれています(プランによる)。別のアプリを契約する必要がなく、管理画面も一つで済むため、シンプルに運用を開始できます。

「ファイルボックス」という機能が強力で、スマホで撮影した領収書をここに放り込むだけで、AIが解析し、仕訳候補を提案してくれます。申請から承認、そして振込データの作成(インターネットバンキングへの連携)までが一気通貫で行えるのが強みです。 経理担当者がそのまま振込業務まで行うような、小〜中規模の組織において非常に使い勝手が良いでしょう。

弥生会計 オンライン:シンプルさと外部連携での対応

弥生会計は、伝統的に「記帳」に特化してきたソフトですが、スマホアプリ(弥生レシート取込アプリ)による証憑保存や、スマート取引取込による自動化に対応しています。

ただし、複雑な多段階承認フローや、従業員ごとの細かい権限設定については、上位の「マネーフォワード」や「freee」に比べるとシンプルな作りになっています。その分、導入のハードルは低く、「まずは社長と数名の社員だけで、領収書のペーパーレス化を始めたい」といった小規模法人や個人事業主には十分な機能を備えています。また、外部の経費精算システム(楽楽精算など)とのCSV連携も可能なため、規模が大きくなったら専用システムを導入し、会計データだけ弥生に取り込むという使い分けも可能です。

【ケーススタディ】会社の規模別・おすすめソフトの選び方

機能の違いは分かっても、実際に自社にどれが合うかは判断が難しいものです。ここでは具体的な2つのケースを挙げて、おすすめの選び方を提案します。

ケースA:社員数5名のITスタートアップ(営業担当あり)

社長もプレイングマネージャーとして動き、バックオフィス専任者がいないケースです。 おすすめは**「freee会計」**です。 理由は、会計機能と経費精算機能が一体化しており、設定の手間が少ないからです。全員がスマホアプリを入れて、レシートをパシャパシャ撮るだけで経理が終わる世界観は、スピード感を重視するスタートアップに最適です。承認フローもシンプルに設定でき、「社長がスマホでOKを出したら、即座に帳簿に反映」という運用が可能です。

ケースB:社員数30名の商社(出張・交際費が多い)

経理担当者が1名おり、内部統制もしっかりしたいケースです。 おすすめは**「マネーフォワード クラウド会計 + クラウド経費」**の組み合わせです。 理由は、承認ルートの分岐(課長→部長→経理など)を細かく設定できる点と、コーポレートカード連携の強さです。社員に法人カードを持たせ、その明細を自動で「クラウド経費」に取り込ませれば、領収書の入力ミスや不正申請を未然に防ぐことができます。また、経理担当者が使いやすい管理画面であることも、運用を定着させる上で重要なポイントです。

導入前に確認すべき「従業員のITリテラシー」

いくら便利なソフトを導入しても、現場の従業員が使ってくれなければ意味がありません。導入失敗の多くは、「機能は素晴らしいが、操作が難しくて誰も使わなくなった」というケースです。

ソフトを選ぶ際は、管理画面の多機能さだけでなく、従業員が使う「スマホアプリの使いやすさ(UI/UX)」を重視してください。 無料トライアル期間を活用し、実際に経理担当者だけでなく、一番ITが苦手そうな営業担当者にもアプリを触ってもらいましょう。「これなら直感的にわかる」「ボタンが押しやすい」という感想が得られるかどうかが、導入成功の試金石となります。

また、導入初期にはマニュアル作成や説明会の実施も必要です。「面倒な作業が増える」と思われないよう、「これを使えば、帰社してからの事務作業がゼロになりますよ」というメリットを強調して伝えることが、定着への近道です。

経費精算の改革は、働き方改革そのもの

経費精算のデジタル化は、単なる「ペーパーレス」ではありません。それは、従業員を無意味な単純作業から解放し、本来のクリエイティブな仕事に向かわせるための「働き方改革」そのものです。

月末の金曜日に、領収書の山と格闘して残業する風景をなくしましょう。 出張先からスマホ一つでサクッと申請し、上司も移動中に承認する。経理担当者は、自動作成された仕訳をチェックするだけ。そんなスマートな業務フローを実現できるツールは、すでに手の中にあります。

「うちはまだ小さい会社だから」と後回しにする必要はありません。むしろ、組織が小さく、小回りがきく今こそ、最新のクラウド会計ソフトを導入して、効率的な経費精算の仕組みを構築するベストタイミングです。ぜひ、あなたの会社に最適なソフトを選び、経理のストレスフリー化を実現してください。

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