EC・POS連携できる会計ソフト|在庫・売上管理を自動化する選び方

ネットショップ(EC)や実店舗(POSレジ)のデータがクラウド会計ソフトと連携しているイメージイラスト。「EC・POS連携できる会計ソフト」のタイトル文字が中央に配置され、売上や在庫管理が自動化される様子を表現しています。
目次

ネットショップと実店舗、両方の「売上」を追いかけるのは限界に近い

「Amazonと楽天の売上データを出力して、手数料を引いて、会計ソフトに入力する」 「実店舗のレジ締めレシートを見ながら、その日の現金売上とカード売上を手打ちする」

ECサイト(ネットショップ)や実店舗を運営する経営者にとって、日々の経理業務は複雑さを極めます。特に、複数の販売チャネル(Amazon、楽天、自社サイト、実店舗など)を持っている場合、それぞれのデータ形式が異なるため、売上の集計作業だけで膨大な時間が奪われてしまいます。

さらに頭を悩ませるのが「在庫」の管理です。商品が売れれば、当然ながら在庫は減ります。しかし、在庫管理システム上の数字は減っていても、会計ソフト上の「棚卸資産(商品)」の数字は、手動で仕訳を切らない限り減りません。

この「販売データ」と「会計データ」のズレを放置すると、決算直前になって「利益が出ているはずなのに、なぜか数字が合わない」「在庫金額が実際と全然違う」という大問題に直面します。

もし、あなたがこれから会計ソフトを選ぶ、あるいは乗り換えるのであれば、最優先すべき基準は「記帳のしやすさ」ではありません。「あなたが使っている販売システムと、勝手に連携してくれるか(API連携)」です。 ボタン一つ、あるいは全自動で、売上から手数料の計算、在庫の増減までを会計ソフトに反映させる。そんな仕組みを作れるかどうかが、多角化する販売ビジネスを成功させる鍵となります。

CSVインポート作業が「経営判断」を遅らせる

多くの事業者が行っているのが、各店舗の管理画面からCSVデータ(売上明細)をダウンロードし、それを会計ソフトの形式に合わせて加工してインポートする、という方法です。手入力よりはマシですが、これも推奨できる方法ではありません。

なぜなら、この作業は「面倒くさい」ため、どうしても後回しにされがちだからです。「忙しいから月末にまとめてやろう」となり、気づけば翌月の半ばまで前月の売上が確定しないことになります。

今の時代、ECのトレンドや商品の売れ行きは数日単位で変わります。「どの商品が利益を生んでいるのか」「広告費をかけすぎではないか」といった経営判断をするためには、リアルタイムの数字が必要です。CSV加工という手作業が挟まることで、数字の鮮度が落ち、結果として経営のスピード感まで失われてしまうのです。

また、手作業による加工はミスを誘発します。消費税率(8%と10%)が混在する食品などの販売において、Excelでの集計ミスは致命的です。インボイス制度への対応も含め、人間がデータを触る工程を極力減らすことこそが、正しい解決策です。

会計ソフトは「すべてのデータの終着駅」であるべき

クラウド会計ソフトを選ぶ際、「POSレジ」や「ECカートシステム」との連携機能を重視すべき理由は、会計ソフトを「単なる帳簿作成ツール」ではなく、「すべての経営データが集まる終着駅(ハブ)」にするためです。

理想的な業務フローは以下の通りです。

  1. お店でお客様が決済する(POSレジ)、またはネットで注文が入る(ECカート)。
  2. その情報がAPI(アプリ連携)を通じて、瞬時に会計ソフトへ飛んでいく。
  3. 会計ソフト側で、「売上高」「売掛金」「支払手数料」といった仕訳が自動生成される。

人間がやることは、最後に「登録」ボタンを押して承認するだけ。あるいは、それすら自動化することも可能です。 このように、入り口(販売)から出口(会計)までをデジタルで直結させることで、経理コストを劇的に下げることができます。では、具体的に「POSレジ」と「ECサイト」それぞれの連携において、どのようなメリットがあるのかを見ていきましょう。

POSレジ連携:レジ締めが終われば、会計も終わっている世界

飲食店や小売店の実店舗において、Airレジ(エアレジ)、スマレジ、ユビレジ、Square(スクエア)などの「タブレットPOSレジ」を導入しているケースが増えています。これらはクラウド会計ソフトと非常に相性が良いツールです。

POSレジ連携の最大のメリットは、「現金過不足」や「決済手段ごとの内訳」を自動で処理してくれる点です。

従来のアナログレジの場合、レジペーパーを見ながら以下のような仕訳を手入力する必要がありました。 ・現金売上:50,000円 ・クレジットカード売上:30,000円 ・QR決済売上:20,000円 ・消費税:9,090円

これらを毎日入力するのは大変な手間です。しかし、POSレジと会計ソフトを連携させておけば、レジで「精算(レジ締め)」操作をした瞬間に、これらの複雑な仕訳データが会計ソフトに送信されます。

さらに、ランチ(軽減税率8%)とアルコール(標準税率10%)が混在していても、レジ側の設定通りに正確に税区分を分けて取り込んでくれます。 また、Squareなどの決済一体型端末であれば、入金時の「決済手数料」の計算まで自動化されるため、入金額と売上額の差額計算に悩む必要もなくなります。

EC連携:複雑怪奇な「手数料」と「入金サイクル」を完全攻略

Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピング、Shopify(ショッピファイ)、BASE(ベイス)など、ECプラットフォームの売上管理は、実店舗以上に複雑です。その原因は、「売上から差し引かれる手数料の多さ」と「入金タイミングのズレ」にあります。

例えば、Amazonで10,000円の商品が売れたとしても、実際に口座に入金されるのは、販売手数料や配送料(FBA手数料)などが引かれた後の金額です。しかも、入金されるのは売れてから2週間後だったりします。

これを正しく経理処理しようとすると、「売上が立った日」に売掛金を計上し、「手数料が確定した日」に経費を計上し、「入金された日」に売掛金を消し込む、という非常に面倒な処理が必要になります。

EC連携に対応した会計ソフト(またはデータ連携アプリ)を使えば、この複雑なパズルを自動で解いてくれます。 ・注文データから「売上高」を計上 ・決済データから「販売手数料」「決済手数料」「送料」を自動計算して経費計上 ・入金データと突き合わせて「売掛金」を消込

これらが自動化されることで、通帳に入金された金額を見て「あれ、計算が合わない?」と悩む時間がゼロになります。特にShopifyやBASEなどの自社サイト型カートシステムは、API連携アプリが充実しており、導入するだけで経理が劇的に楽になるケースが多いです。

多くの人が誤解している「在庫連動」の壁

ここで、一つ重要な注意点をお伝えしなければなりません。それは、「会計ソフトと連携すれば、在庫の金額もリアルタイムで全自動管理できる」というのは、半分正解で半分間違いだということです。

確かに、freeeやマネーフォワードなどのクラウド会計ソフトには、POSレジやECカートから「商品が何個売れたか」というデータを取り込む機能はあります。しかし、会計ソフト側で「今、倉庫にいくら分の在庫があるか(棚卸資産残高)」を、日々リアルタイムで完璧に把握し続けるのは、実は非常にハードルが高いのです。

なぜなら、会計ソフトはあくまで「金額」を管理するツールであり、「モノ(個数)」を管理するツールではないからです。 例えば、仕入れが発生したときに「Tシャツが100枚入庫した」という情報を会計ソフトに自動反映させるには、仕入れ管理システムとも連携しなければなりません。売上の連携だけでは、「出ていく一方」で在庫がマイナスになってしまいます。

そのため、本格的に在庫管理(個数管理)と会計を連動させたい場合は、クラウド会計ソフト単体で完結させようとせず、「クラウド在庫管理システム(ロジクラ、zaicoなど)」を間に挟む構成を検討する必要があります。 「EC/POS」⇔「在庫管理システム」⇔「会計ソフト」 この3つを連携させることで初めて、売れた瞬間に在庫が減り、その金額情報が会計ソフトに流れるという完全なサイクルが出来上がります。

主要3大クラウド会計ソフトの「EC・POS」連携力比較

では、具体的にどの会計ソフトを選べばよいのでしょうか。日本国内の主要3ソフトについて、連携の強みと特徴を比較してみましょう。(※各ソフトの仕様は2025年時点の情報を基にした一般的な特徴です。最新の仕様は必ず公式サイトをご確認ください)

freee会計:豊富なアプリストアで「つなぐ」体験

freeeは「アプリストア」という仕組みを持っており、スマホにアプリを追加するような感覚で、様々なECカートやPOSレジと連携できます。 特に「Square」「Airレジ」「スマレジ」といった主要POSとの連携は非常に強力で、設定も簡単です。また、Amazonや楽天などのモール連携に関しては、独自の同期機能に加え、外部のデータ変換サービスともスムーズに連携します。 特徴的なのは、売上データを取り込む際に「未決済取引(売掛金)」として自動登録し、入金があった際に自動で消し込む「自動消込」の精度の高さです。入金サイクルが複雑なEC事業者にとっては大きなメリットです。

マネーフォワード クラウド:データ連携の網羅性と詳細設定

マネーフォワードは、元々が家計簿アプリからスタートしていることもあり、金融機関や外部サービスとのデータ連携(アグリゲーション)技術に定評があります。 「マネーフォワード クラウドPOS」という自社サービスのレジを持っていますが、他社の「スマレジ」や「ユビレジ」とも深く連携します。 取り込んだデータの仕訳ルール(どの科目に振り分けるか)を非常に細かく設定できるため、税理士と相談しながら厳密な経理処理を行いたい法人に向いています。また、在庫管理ソフト(CAERUなど)とのAPI連携事例も多く、拡張性が高いのが特徴です。

弥生会計 オンライン:「スマート取引取込」でのシンプル連携

弥生は「スマート取引取込」というハブ機能を使って外部データを取り込みます。「Airレジ」や「スマレジ」などの主要サービスには対応していますが、freeeやマネーフォワードに比べると、連携できるアプリの数はやや厳選されている印象です。 しかし、その分設定はシンプルで、「とにかく毎日の現金売上とカード売上だけ自動で入ればいい」という小規模な飲食店や小売店にとっては、必要十分な機能を備えています。複雑な在庫連携よりも、日々の記帳の手間を減らすことに特化しています。

【ケーススタディ】業態別・最強の組み合わせはこれだ

連携機能は「相性」がすべてです。あなたのビジネススタイルに合わせた、鉄板の組み合わせ例をご紹介します。

ケースA:実店舗のカフェ経営(iPadレジ使用)

お客様は現金、カード、PayPayなどで支払います。 おすすめ構成:「Airレジ」+「freee会計」または「弥生会計 オンライン」 Airレジは無料で使える高機能レジとして人気ですが、freeeや弥生との相性が抜群です。日々の売上データが自動で会計ソフトに飛ぶため、閉店後のレジ締め作業は「現金を数えてレジアプリに入力する」だけで終了。あとは家に帰って会計ソフトを見れば、仕訳が完了しています。

ケースB:自社ブランドのアパレルEC(Shopify利用)

在庫管理も厳密に行いたいD2Cブランドです。 おすすめ構成:「Shopify」+「ロジクラ(在庫管理)」+「マネーフォワード クラウド」 Shopifyで売れたデータを、在庫管理ソフトの「ロジクラ」が受け取り、倉庫に出荷指示を出します。同時に、売上と在庫減少のデータがマネーフォワードに連携されます。これにより、「何が売れたか(コマース)」「何個残っているか(ロジ)」「いくら儲かったか(会計)」が完全に同期します。少し上級者向けの構成ですが、事業拡大を目指すならこの形が理想です。

ケースC:Amazonと楽天での物販(副業〜小規模)

多店舗展開していますが、在庫管理はExcelで十分なレベルです。 おすすめ構成:「各種モール」+「freee会計」 freeeはAmazonや楽天の明細取得が得意です(または、データ連携専用の「ECコネクター」などを介する)。複数のモールの売上と手数料を、一つの会計ソフトで統合して見ることができるため、「結局、Amazonと楽天、どっちが利益率がいいの?」という分析が簡単に行えます。

導入前に確認すべき「API連携」の落とし穴

「連携できると書いてあったのに、使ってみたら思ったのと違った」という失敗を防ぐために、契約前に必ず以下の2点を確認してください。

  1. 「軽減税率」に対応して取り込めるか 特に食品を扱う場合、8%と10%が混在した売上データを、税率ごとに分けて会計ソフトに取り込めるかは死活問題です。連携アプリによっては、全て10%として取り込まれてしまい、後で手修正が必要になるケースがあります。
  2. 「ポイント利用分」の処理 お客様がポイントを使って買い物をした場合、その値引き分を「売上値引き」として処理するのか、「経費」として処理するのか。この設定が柔軟にできるかどうかも重要です。ここができないと、売上の合計金額が合わなくなります。

自動化で生まれた時間を「次の売上」を作るために使う

ECサイトや店舗運営において、経理作業は「守り」の仕事です。いくら完璧に帳簿をつけても、それだけで売上が増えるわけではありません。だからこそ、この守りの時間は、テクノロジーを使って極限まで短縮すべきです。

POSレジやECカートと会計ソフトがつながれば、あなたは「入力作業」から解放されます。 そして、手に入れたリアルタイムの数字を見て、「次はこの商品を仕入れよう」「来月はここに広告を出そう」という「攻め」の戦略を考える時間が生まれます。

会計ソフトを選ぶときは、単体の機能だけでなく、「今使っているレジやカートと仲が良いか」という視点を忘れないでください。そのつながりこそが、あなたのビジネスを加速させる最強のエンジンになるはずです。

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