クラウド会計のサポート比較|電話・チャット・画面共有で初心者が選ぶべきは?

クラウド会計ソフトのサポート体制(電話、チャット、画面共有)を比較するイラスト。「クラウド会計のサポート比較|電話・チャット・画面共有で初心者が選ぶべきは?」というタイトルとともに、オペレーターがユーザーを親身にサポートしている様子が描かれています。
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経理の挫折は「機能不足」ではなく「相談相手不在」から始まる

クラウド会計ソフトの導入を検討するとき、多くの方が「料金の安さ」や「機能の多さ」を比較基準にします。銀行明細の自動取り込みや、AIによる仕訳の推測など、近年の会計ソフトの進化は目覚ましく、確かに便利になっています。しかし、実際にソフトを導入した後に「使いこなせない」「経理が苦痛でたまらない」と感じて解約してしまうケースが後を絶ちません。

なぜ、これほど便利なツールを使っているのに挫折してしまうのでしょうか。その最大の原因は、機能が足りないからではありません。困ったときに「すぐに聞ける相手がいない」という孤立感にあります。

経理の実務は、初心者にとっては未知の連続です。「この領収書はどの勘定科目にするべきか」「開始残高が合わないときはどうすればいいのか」「登録したはずのデータが消えてしまった」。こうした小さな疑問が解消されないまま積み重なると、やがて心理的な壁となり、ソフトを開くことさえ億劫になってしまいます。

特に、年に一度の確定申告時期には、この不安がピークに達します。期限が迫る中、誰にも相談できずにパソコンの前で頭を抱える時間は、経営者にとって大きな損失です。だからこそ、クラウド会計ソフト選びにおいて、機能や料金以上に重視すべきなのが「サポート体制の手厚さ」なのです。

初心者が陥る「検索しても正解にたどり着けない」無限ループ

「分からないことがあれば、ネットで検索すれば解決するはずだ」 そう考えて、サポートのない格安プランや、マニュアルサイトしかないソフトを選んでしまう方がいます。しかし、ここには経理初心者特有の大きな落とし穴があります。

それは、「検索するためのキーワードが分からない」という問題です。

ある程度の知識がある経験者であれば、「売掛金 消込 相殺」といった専門用語で検索し、ピンポイントで解決策を見つけることができます。しかし、初心者の場合、目の前で起きている現象をどう言語化していいかが分かりません。「お金 合わない どうする」「入力 変」といった抽象的な言葉で検索しても、求めている答えにはなかなかたどり着けません。

さらに、検索結果に表示されたヘルプページを見ても、そこに書かれている「貸方・借方」「複合仕訳」「事業主貸」といった専門用語の意味が分からず、その用語を調べるためにまた検索する……という「無限検索ループ」に陥ってしまいます。

自分一人で解決しようとすると、慣れている人なら5分で終わる作業に、3時間も4時間も費やしてしまうことは珍しくありません。この時間は、本来であれば本業の売上を作るために使うべき貴重な時間です。月額数百円のコストを削った結果、数万円分の時間を失ってしまっては本末転倒です。自分の状況を汲み取り、翻訳して答えをくれるサポート窓口の存在は、時間短縮のための投資といえます。

サポート体制は「保険」。安さだけで選んで失う大きなコスト

サポートの手厚いプランは、当然ながらサポートなしのプランよりも料金が高く設定されています。しかし、これを単なる「コスト」と捉えるか、事業を継続するための「保険」と捉えるかで、ソフト選びの視点は大きく変わります。

会計ソフトは、一度導入すると数年は使い続けることになる、いわば事業のインフラです。そのインフラが、操作ミスや不明点によって停止してしまうリスクを想像してみてください。

税務署への申告期限に間に合わなかった場合の延滞税のリスク。 間違った仕訳をしてしまい、本来払わなくていい税金を払ってしまうリスク。 何より、経理作業への苦手意識から、数字を直視しなくなってしまう経営リスク。

これらを未然に防いでくれるのが、手厚いサポートです。「最初は高いプランで契約し、操作に慣れてきたら安いプランに変更する」という柔軟な使い方も多くのソフトで可能です。まずは「自分は経理のプロではない」ということを認め、プロの力を借りられる環境を確保することから始めましょう。

3つの主要サポート窓口の徹底比較

では、具体的にどのようなサポートがあれば安心なのでしょうか。現在、クラウド会計ソフトが提供している主なサポート窓口は、「チャット」「電話」「画面共有」の3つに大別されます。

これらは単に連絡手段が違うだけでなく、解決できる問題の種類や、利用者に求められるスキルが全く異なります。それぞれの特徴と、メリット・デメリットを深く理解しておくことが、自分に合ったソフト選びの第一歩です。

気軽さと記録性が魅力の「チャットサポート」

現在、多くのクラウド会計ソフトで標準装備されているのがチャットサポートです。操作画面の右下にあるアイコンをクリックし、テキストメッセージを送って質問する形式です。

チャットサポートの最大のメリットは、「気軽さ」と「記録性」です。電話のようにオペレーターにつながるまで受話器を持って待つ必要がなく、他の作業をしながら返信を待つことができます。また、教えてもらった操作手順や参照すべきヘルプページのURLが文字として残るため、後から何度でも読み返すことができるのは、忘れっぽい方にとっては非常に助かる点です。

一方で、デメリットもあります。それは「状況を文章で説明する言語化能力」が求められる点です。「画面の右上の数字がおかしい」といった曖昧な表現では、オペレーターも状況を把握できず、何度も質問のやり取り(ラリー)を繰り返すことになります。結果として、解決までに意外と時間がかかってしまうこともあります。

また、近年のチャットサポートは、最初の対応が「AIチャットボット(自動応答)」になっていることがほとんどです。簡単な質問なら即座に解決しますが、複雑なトラブルの場合、なかなか人間のオペレーターにつながらず、ストレスを感じる場面も少なくありません。

安心感とニュアンス伝達に優れた「電話サポート」

昔ながらの電話サポートですが、経理初心者にとっては依然として根強い人気があり、強力な味方となります。

電話の最大の強みは、「声で伝えられる情報量の多さ」です。タイピングが苦手な方でも、口頭であれば「あの、なんか登録ボタンがグレーになって押せないんですけど…」といったニュアンスをすぐに伝えられます。オペレーターも声のトーンから利用者の焦りや理解度を察してくれるため、相手のレベルに合わせた言葉を選んで説明してくれます。

また、「ついでにこれも聞きたい」と、関連する疑問をその場で解消できるのも電話ならではのメリットです。チャットでは一つの質問が終わると会話が終了してしまいがちですが、電話なら会話の流れで複数の問題を一気に解決まで持っていくことができます。

デメリットは、やはり「待ち時間」です。特に確定申告時期(2月〜3月)や、五十日(ごとおび)、月末などは電話回線が非常に混雑し、数十分待たされることも珍しくありません。また、口頭での説明だけでは、具体的なボタンの場所や操作手順が伝わりづらい場合があり、「右上の歯車マークと言われましても、見当たりません」といったすれ違いが起きることもあります。

初心者にとっての最強の武器「画面共有サポート」

経理初心者に最も推奨したいのが、「画面共有(リモート)サポート」です。これは、インターネットを通じて、オペレーターが利用者のパソコン画面を直接閲覧(場合によっては操作の補助)しながら案内してくれるサービスです。ZoomなどのWeb会議ツールや、専用の接続ツールを使用します。

このサポートの破壊力は抜群です。利用者は「ここを見てください」と言うだけで済みます。状況を言葉で説明する必要は一切ありません。オペレーターは画面を見れば、どこで操作ミスをしているのか、どの設定が間違っているのかを瞬時に把握できます。

まるでパソコン教室の先生が隣に座って教えてくれているような安心感があり、電話やチャットでは1時間かかっていた問題が、画面共有ならわずか5分で解決するということも多々あります。

デメリットとしては、このサービスを提供しているソフト会社が限られていること、あるいは上位プラン限定のサービスであることが多い点です。また、事前に接続用のソフトをインストールするなどの準備が必要になる場合がありますが、一度設定してしまえば、これほど心強い機能はありません。

AIチャットボットと有人対応の決定的な違い

最近のトレンドとして、AI技術の活用が進んでいます。「質問を入力してください」というボックスに質問を入れると、AIが瞬時に回答を表示してくれる機能です。

これは「パスワードを変更したい」「料金プランを確認したい」といった、答えが決まっている定型的な質問には非常に有効です。24時間365日、待ち時間なしで回答が得られるのは大きな利点です。

しかし、経理の実務は「ケースバイケース」の塊です。「この取引は特殊な事情があるのだが、どう入力すればいいか」「なぜか貸借対照表がズレているが原因がわからない」といった、文脈を理解して原因究明が必要な問いに対しては、現在のAIではまだ不十分なことが多いのが実情です。

重要なのは、「AIで解決しなかったときに、スムーズに人間にバトンタッチできるか」という導線設計です。中には、AIで解決しない場合に問い合わせフォームへのリンクしか表示されず、リアルタイムで人に聞く手段がないソフトもあります。契約前には、チャット画面を開いてみて、「オペレーターに交代する」という選択肢が簡単に見つかるかどうかを確認することをお勧めします。

主要3大クラウド会計ソフトのサポート対応力を徹底比較

ここからは、日本国内でシェアの大部分を占める「弥生会計 オンライン」「freee会計」「マネーフォワード クラウド」の3社が、それぞれどのようなサポート哲学を持っているか、その違いを深掘りしていきます。(※各社のプラン名称やサービス内容は変更される場合があるため、必ず公式サイトで最新の適用条件をご確認ください)

伝統と実績の「弥生」は電話と画面共有に強い

デスクトップ版の時代から長年、業務ソフト界の王者として君臨してきた「弥生」シリーズ。その最大の特徴は、ITや経理に不慣れなユーザーを前提とした手厚いサポート体制にあります。

弥生のクラウド版(青色申告オンライン・白色申告オンラインなど)では、サポート付きのプラン(ベーシックプランなど)を選ぶことで、電話サポートとメール、チャット、そして画面共有サポートのすべてを利用できるケースが多いです。特に「オペレーターが同じ画面を見ながら赤ペンで指し示してくれる」ような画面共有サポートの導入に積極的で、パソコン操作そのものに不安がある層から絶大な支持を得ています。

「マニュアルを読むより、聞いたほうが早い」と考えるタイプの方や、キーボード入力よりも会話でのコミュニケーションを好む方にとって、弥生は最も安心できる選択肢と言えるでしょう。業界最大手の安心感は、サポートのつながりやすさやオペレーターの教育体制にも表れています。

効率化を追求する「freee」はチャットとヘルプセンターが中心

「freee会計」は、経理の自動化や効率化を最優先に設計されたソフトです。その思想はサポート体制にも表れており、基本的にはチャットと充実したヘルプページでの自己解決を促す設計になっています。

freeeのチャットサポートは、AIによる自動応答と有人対応を組み合わせており、システム内で完結するスピード感を重視しています。電話サポートも存在しますが、法人向けの上位プランや、特定の有料オプション契約が必要になることが一般的です。「電話でじっくり相談したい」というニーズよりも、「スマホやPCでサクサク作業を進めたい」というデジタルネイティブな層に向いています。

また、freeeはユーザーコミュニティや外部の解説記事が非常に豊富であるため、検索が得意な方であれば、サポートに問い合わせる前に答えが見つかることも多いのが特徴です。「自分で調べて解決する力が身につく」という意味では、学習意欲の高いユーザーに適しています。

バランス型の「マネーフォワード」はプランによる使い分け

「マネーフォワード クラウド」は、会計だけでなく給与や請求書なども含めたバックオフィス全体の効率化を目指すソフトです。サポート体制は、チャットとメールが基本ですが、法人向けや上位プランでは電話サポートも提供されています。

特徴的なのは、メールサポートの質の高さです。チャットのような即時性はありませんが、複雑な質問に対して検証を行った上で、丁寧な回答が返ってくる傾向があります。また、マネーフォワードは税理士との連携を重視しているため、操作に関するサポートはメーカーが、税務に関する相談は連携している税理士が、という役割分担が明確です。

チャットでサクッと聞きたい時と、メールで込み入った内容を相談したい時とで使い分けができるため、ビジネスの成長に合わせて柔軟に対応できる点が強みと言えます。

サポート担当者が「答えてくれること」と「答えられないこと」

サポートの手厚いソフトを選んだとしても、一つだけ注意しなければならない「法律の壁」があります。それは、ソフト会社のサポート担当者は税理士ではないため、具体的な税務相談には答えられない(税理士法違反になるため)という点です。

初心者がよくやってしまうNG質問の例を見てみましょう。

  • NG質問:「親睦会で使ったこの5,000円のレシートは、交際費で落とせますか?それとも会議費ですか?」
  • OK質問:「交際費という勘定科目を選んで入力したいのですが、ソフトのどの画面から操作すればいいですか?」

前者は「税務判断」が必要なため、サポート担当者は「一般的な事例としては〇〇ですが、最終的には税理士や税務署にご確認ください」としか答えられません。これを「冷たい対応だ」と感じてしまうユーザーもいますが、これは法律を守るための正しい対応です。

サポート担当者が解決できるのは、あくまで「ソフトの操作方法」や「設定の仕方」、「エラーの解消方法」です。「どの科目に入れるべきか」という判断そのものを丸投げすることはできない、という前提を理解しておくと、無用なストレスを感じずに済みます。逆に言えば、操作方法に関してはプロフェッショナルですから、遠慮なく何度でも質問して大丈夫です。

【ケース別】あなたに最適なサポート形式はこれだ

結局、どのサポート形式を選べば失敗しないのでしょうか。ご自身の「ITリテラシー(PC操作への慣れ)」と「経理リテラシー(簿記知識の有無)」の組み合わせで判断することをお勧めします。迷ったときは以下の基準を参考にしてください。

1. PC操作も簿記も自信がない「完全初心者」

迷わず「電話・画面共有あり」のプランを選んでください。 このタイプの方が、安さを理由にチャットのみのプランを選ぶと、高確率で挫折します。操作につまずくたびに手が止まり、最終的に確定申告の期限に間に合わなくなるリスクがあります。年間数千円〜1万円程度の差額であれば、電話サポート代は「安心料」として十分に元が取れます。特に画面共有があれば、最初の設定という最大のハードルを楽に越えられます。

2. PC操作は得意だが、簿記はわからない「デジタル派」

「チャットサポート」で十分対応可能です。 PC操作に慣れていれば、画面のキャプチャを撮ってチャットで送ったり、オペレーターからのテキスト指示を理解して設定を変更したりすることは苦にならないはずです。ただし、簿記の知識がない分、質問の意図が伝わりにくいことがあるため、AIではなく有人オペレーターに繋がりやすい時間帯やコツを把握しておくと良いでしょう。

3. PC操作は苦手だが、簿記の知識はある「ベテラン経理」

意外にも「メールサポート」や「電話」が向いています。 簿記の知識がある方は、「やりたいこと(借方・貸方など)」は明確ですが、「ソフトのどこを押せばそれができるか」だけが分からない状態です。質問内容が具体的であるため、メールで的確な回答をもらうか、電話でピンポイントに操作箇所を聞くだけで解決します。画面共有までは必要ないケースが多いでしょう。

無料期間中に「わざと」問い合わせてみる

これからクラウド会計ソフトを契約しようとしている方へ。最後に、必ず実践していただきたいアクションプランがあります。

それは、「無料お試し期間中に、あえてサポートに問い合わせてみる」ことです。

多くのソフトには、2週間〜1ヶ月程度の無料体験期間があります。この期間は、単に機能などの使い勝手を試すだけでなく、サポートの品質をテストするための期間でもあります。

実際に、以下のようなポイントをチェックしてみてください。

  • 繋がりやすさ: 平日の昼間など、自分が作業しそうな時間帯にチャットや電話はすぐ繋がるか。
  • 回答のわかりやすさ: 専門用語ばかり並べた定型文ではなく、初心者にもわかる言葉で噛み砕いて説明してくれるか。
  • 雰囲気: 突き放すような態度ではなく、こちらの困りごとに寄り添ってくれるか。
  • 画面共有の手順: もし画面共有が使えるなら、接続までの手順が簡単かどうかも確認しましょう。

たとえ特に困っていることがなくても、「初期設定のここがよく分からないのですが…」と簡単な質問を投げてみてください。その時のレスポンスの速さと丁寧さこそが、今後あなたがトラブルに直面した時の「救命ボート」の性能そのものです。契約してから「全然つながらない!」と後悔しないよう、事前のテストは必須です。

経理を「孤独な作業」にしないために

クラウド会計ソフトの導入は、単なるツールの変更ではありません。それは、経理という孤独で不安な作業を、テクノロジーと人の力で支えてもらう体制への移行です。

機能の多さや料金の安さも大切ですが、「困ったときに、すぐに助けてくれる誰かがいる」という安心感は、長く事業を続けていく上で何にも代えがたい価値になります。サポートが充実していれば、経理にかかるストレスが減り、本業に集中できる時間が増え、結果として事業の成長につながります。

画面の向こう側に、あなたの経理業務を支えてくれる頼もしいパートナーがいるかどうか。 次に会計ソフトの料金ページを見る際は、金額だけでなく、「サポート内容」の欄をじっくりと見比べてみてください。そこにこそ、後悔しないソフト選びの答えが隠されています。

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