損益通算を知ることが節税の第一歩
事業を続けていると、ある年度は利益が出ても別の年度には赤字になることがあります。また、本業で利益が出ている一方、投資や副業で損失が発生することも珍しくありません。
このような場合に役立つのが**「損益通算」**という仕組みです。
損益通算とは、ある所得区分で生じた赤字(損失)を、他の所得区分の黒字(利益)と相殺できる制度です。これにより、課税所得を圧縮し、結果として納める税金を少なくすることが可能になります。
見落とされやすい損益通算の課題
損益通算は節税効果が高い一方で、次のような課題もあります。
- どの所得同士が通算できるのかが複雑
事業所得、不動産所得、株式やFXなどの譲渡所得・雑所得には、損益通算の可否に制限がある。 - 証憑の整理が煩雑
損失が出た投資や事業の取引記録を正しく残しておかないと、通算を認めてもらえないことがある。 - 申告のタイミングを逃すと無効
確定申告で損益通算をしなければ、後から修正は難しいケースが多い。
このように制度は有利でも、正しく処理しないとせっかくの節税チャンスを逃してしまいます。
クラウド会計を活用すれば損益通算を効率化できる
結論として、損益通算を確実に行い、節税効果を最大化したいならクラウド会計ソフトの活用が最も効果的です。
- 複数の所得区分(事業、不動産、雑所得など)を一元的に管理できる
- 損失・利益を自動で集計し、損益通算の適用可否をすぐに確認できる
- 証憑を電子保存し、通算の根拠を明確に残せる
- 税額シミュレーション機能で、通算後の納税額をリアルタイムに把握できる
クラウド会計を導入することで、損益通算を「制度として知っている」だけでなく、日常的に活用できる仕組みを整えることが可能になります。
まとめると
損益通算は、赤字をそのまま放置せず、黒字と組み合わせることで節税につなげられる制度です。ただし、複雑な計算や証憑管理が必要となり、手作業では効率が悪くミスも起きやすいのが現実です。
クラウド会計を使えば、こうした課題を解決し、損益通算の節税メリットを確実に享受できるようになります。
損益通算の制度概要を理解する
損益通算は、ある所得区分で赤字が出たときに、その損失を他の所得から差し引いて課税所得を減らせる制度です。結果として、所得税や住民税の負担が軽減されます。
損益通算の大きな特徴は、赤字をただ抱えるのではなく、利益と相殺することで税金を減らせる点にあります。特に個人事業主や中小企業経営者にとっては、資金繰りを改善できる重要な節税策となります。
通算できる所得とできない所得
通算できる代表的な所得
- 事業所得(個人事業主の収益から経費を差し引いたもの)
- 不動産所得(アパート経営など)
- 山林所得
- 譲渡所得(株式や不動産など一部の資産売却)
これらは損益通算の対象となり、赤字を他の所得と相殺できます。
通算できない所得(損失が限定されるケース)
一方で、すべての赤字が損益通算できるわけではありません。代表的な除外例は以下のとおりです。
- 給与所得との通算不可
サラリーマンの給与は他の赤字と相殺できない。 - 株式・FXなどの金融商品取引の損失
原則として「同じ区分内」でのみ損益通算可能(株式同士、先物同士など)。 - 生活に関わる資産の売却損
マイカーや生活用品の売却による損失は対象外。
損益通算と繰越控除の違い
- 損益通算:同じ年の黒字と赤字を相殺する仕組み
- 繰越控除:相殺しきれなかった損失を翌年以降に繰り越す仕組み(最長3年や10年など区分による)
両者を併用することで、より長期的に節税効果を得られます。
クラウド会計が有効な理由
1. 複数の所得区分を一元管理
事業所得、不動産所得、雑所得などを一つのシステムでまとめて管理できるため、通算可能な損失と利益を見落とすことがありません。
2. 自動仕訳による赤字・黒字の即時把握
銀行口座やクレジットカードと連携し、自動で仕訳されるため、「どの所得が黒字で、どの所得が赤字か」をリアルタイムに確認できます。
3. 証憑管理の効率化
損益通算には根拠となる取引証憑が必要です。クラウド会計なら領収書・請求書・契約書を電子保存でき、税務調査でのリスクを軽減できます。
4. 税額シミュレーション機能
クラウド会計には「納税額試算」機能が備わっており、損益通算を適用した場合と適用しない場合の比較が可能。節税効果を事前に数値で把握できます。
理由のまとめ
損益通算は税制上のメリットが大きい制度ですが、対象所得の区分や証憑管理が複雑です。クラウド会計を導入すれば、これらの課題を解消し、確実に節税効果を享受できる仕組みを構築できます。
シミュレーションで見る損益通算の効果
事例1:事業所得と不動産所得
- 事業所得(小売業):+500万円
- 不動産所得(賃貸アパート):▲200万円(修繕費増加による赤字)
損益通算適用後
500万円 − 200万円 = 300万円(課税所得)
税率30%の場合、節税額=200万円 × 30% = 60万円節税
事例2:事業所得と株式譲渡損
- 事業所得:+600万円
- 株式売却損:▲150万円
損益通算は不可(株式損失は同区分内のみ)
→ 事業所得600万円に課税
→ 株式損は繰越控除で翌年以降に利用
事例3:不動産所得と山林所得
- 不動産所得:+400万円
- 山林所得:▲300万円
損益通算適用後
400万円 − 300万円 = 100万円
税率20%の場合、節税額=300万円 × 20% = 60万円節税
クラウド会計での仕訳例
不動産の修繕費(赤字要因)
借方:修繕費 1,500,000円
貸方:普通預金 1,500,000円
→ 不動産所得に計上。赤字部分が自動で通算候補に。
株式売却損(通算対象外)
借方:投資有価証券売却損 1,200,000円
貸方:投資有価証券 1,200,000円
→ クラウド会計が「株式損は他所得と通算不可」と区分管理。翌年度への繰越控除に反映。
山林所得の赤字
借方:山林管理費 2,000,000円
貸方:現金 2,000,000円
→ 自動で山林所得に紐付けられ、不動産所得と通算可能に。
導入事例
事例1:建設業を営むAさん
副業で所有していた賃貸物件が赤字だったが、クラウド会計で通算を自動計算。
結果、課税所得が200万円減り、税金が約60万円節約できた。
事例2:飲食業B社
株式投資で損失を出したが、クラウド会計で「事業所得とは通算できない」とすぐに把握。
繰越控除に回すことで、翌年の黒字と相殺でき、長期的に節税に成功。
事例3:不動産オーナーCさん
山林経営で赤字が出ていたが、クラウド会計で不動産所得と通算できることを確認。
税理士に相談し、確定申告で適用。結果、年間70万円以上の税負担削減につながった。
比較まとめ:クラウド会計なし vs あり
| 項目 | クラウド会計なし | クラウド会計あり |
|---|---|---|
| 所得区分の把握 | 手作業で複雑 | 自動で区分管理 |
| 損益通算計算 | 手計算でミス多発 | ワンクリックで集計 |
| 繰越控除の処理 | 失念しやすい | 翌年に自動反映 |
| 節税効果 | 見落としやすい | 最大限享受可能 |
今すぐ実践できる損益通算の行動ステップ
ステップ1:クラウド会計ソフトを導入する
まずは、freee・マネーフォワード・弥生会計オンラインなど、複数の所得区分を管理できるクラウド会計ソフトを導入します。銀行口座や証券口座との連携機能があるソフトを選ぶと便利です。
ステップ2:所得区分を正しく設定する
クラウド会計の勘定科目やタグを活用し、
- 事業所得
- 不動産所得
- 山林所得
- 株式・投資関連(通算不可区分)
などを明確に分類します。
ステップ3:取引データを自動取り込み
銀行口座や証券口座をクラウド会計に連携し、取引を自動仕訳。損失と利益がどの区分に属するかをリアルタイムで把握できます。
ステップ4:証憑を電子保存する
領収書・契約書・取引明細をスキャンやPDFでアップロード。税務調査で損益通算を認めてもらうための根拠資料をクラウド上に一元管理しましょう。
ステップ5:損益通算シミュレーションを行う
クラウド会計のレポート機能を使って、損益通算適用後の課税所得と納税額を試算。税理士と共有して、最適な申告方針を決めましょう。
行動の成果として得られるメリット
- 損益通算を漏れなく適用し、節税効果を最大化できる
- 証憑管理の透明性が高まり、税務調査に強くなる
- 繰越控除も自動で反映され、長期的に節税が可能
- 経営判断に必要な資金繰り予測が正確になる
まとめ
損益通算は、事業の赤字や投資の損失を他の所得と組み合わせて課税所得を減らせる強力な制度です。ただし、対象となる所得区分や手続きが複雑で、証憑管理を誤ると適用できないリスクもあります。
クラウド会計を活用すれば、
- 複数所得区分を一元管理
- 損失・利益を自動集計
- 証憑を電子保存し透明性を確保
- 税額シミュレーションで事前に効果を把握
といった仕組みを整えられ、節税効果を確実に得ることが可能です。
つまり、「クラウド会計 × 損益通算」こそが、赤字を活かして税負担を軽減し、資金繰りを改善する最適解なのです。

